【理論と実践】「異論を唱える義務」が組織を強くする
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令和7年3月11日 医療・介護経営の理論と実践 2494号
■「異論を唱える義務」が組織を強くする
中神勇輝(なかがみゆうき)
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おはようございます。中神です。
今日は、『なぜ、「異論」の出ない組織は間違うのか』(宇田左近氏、黒川清氏著)の
学びをシェアします!
さて、職場で「これはおかしいのでは?」と思うことがあるでしょうか。
そして、その思いを声に出せましたか。
今回は、この本の第1章として、
組織における異論を唱える「義務」について考察します。
■物言えぬ組織の危険性
日本の組織では、「面従腹背」を当たり前とし、
問題が起きても「私は聞いていない」と責任回避する文化が根深く存在します。
著者は次のように指摘しています。
「組織全体として外部の関与を阻み、前例踏襲を当然のこととし、
内部合理性を好み、強烈な現状維持と既存組織の拡大、
そしてそれを改革しようとする人に対しては面従腹背、
不作為・先送りという手段で徹底対抗する姿は、つかみどころのない生き物」(引用)
この「生き物」のような組織文化の中では、
「なんとなく変だ」と気づいた人も声を上げられません。
そして、組織が困難に直面したとき、「私は聞いていなかった」
と言って責任逃れをしても手遅れなのです。
「物言えば唇寒し」という日本社会の同質性の強さは、
組織の健全性を損なう重大な要因となっています。
問題に気づいても、それを指摘することで自分の立場が危うくなることを恐れ、
多くの人は沈黙を選びます。
■ 「異論を唱える義務」という行動規範
この状況を打破するために著者が提案するのが、
「異論を唱える義務(Obligation to dissent)」という行動規範です。
「マッキンゼーでは、各人に「異論を唱える義務」(Obligation to dissent)を課していた。
自由に意見を言ってもいい、のではなく、違うと思ったら相手の職位や年齢、
年次にかかわらず「言わなければならない」という規範」(引用)
注目すべきは、これが単なる「権利」ではなく「義務」として位置づけられていることです。
「言ってもよい」ではなく「言わなければならない」という規範は、
組織の構成員すべてに責任を課します。
「異論を唱えることを「権利」ではなく「義務」とする意味は深い。」(引用)
また、異論を聞いた側にも、それに対応する責任が生じます。
単に聞き置くだけでは不十分で、何らかの判断や行動を起こす必要があるのです。
これにより、組織全体の責任感が高まります。
■異論を唱えるための前提条件
ただし、「異論を唱える義務」が機能するためには、いくつかの前提条件があります。
1)ファクトベースの議論
まず、議論は感情や個人的な意見ではなく、事実に基づいたものでなければなりません。
「組織内の若手ほど分析結果の数字、あるいは文献調査などを通じて
事実を把握していたり、一次情報に接することも多いが、
年次によるヒエラルキーの強い世界ではなかなか発言の機会がない。
ファクトベースが前提であることによって年次の壁を超えることが可能」(引用)
ファクトベースの議論は、年次や職位の壁を超えて、若手でも発言できる環境を作り出します。
数字や事実が語る力は、ヒエラルキーをフラットにする効果があるのです。
2)多様性と共通の価値観のバランス
次に重要なのは、多様な考え方を持つ人々が、共通の価値観や目標を持つことです。
「目的は明示的に共有化されている」が「考え方は多様」ということが重要(引用)
多様な視点が存在することで、問題に対する多角的なアプローチが可能になります。
しかし同時に、組織としての共通の目的や価値観があることで、議論が建設的な方向に進みます。
「チーム全体が言い訳のできない環境を良しとする共通の価値観を持ち、
目的を達成することにコミットした人たちの集団である」(書籍の引用)
また、この環境では互いの尊重も欠かせません。
「年次や出身にかかわらず、お互い同士を尊重できる組織であることが必要」(引用)
■異論が生み出す組織の強さ
「異論を唱える義務」が根付いた組織では、多様な視点から新しい価値が生まれます。
「多様な人材が共通の価値観、目的を持って異なる意見をぶつけ合い、
新しい価値を生み出していく環境が創出」(引用)
また、プロフェッショナル同士の信頼関係も重要です。
「プロフェッショナルがお互い同士の信頼関係を基に
瞬時にやり取りができることの重要性」(引用)
このような組織では、メンバーが組織に縛られることなく
自由に意見を述べることができ、前例のない課題にも柔軟に対応できるようになります。
「多様な考え方がぶつかり合いそこから新たな考えが生み出されていくことで
前例のない事態への対処も可能になる。」(引用)
■終わりに
組織における「異論」の価値は計り知れません。
それは単なる意見の相違ではなく、組織の健全性と創造性を高める重要な要素です。
次回の第2章では、「集団思考型マインドセット」が
いかに組織を蝕むかについて考察します。
自分たちの組織に「異論を唱える義務」がありますか。
もし今日から導入するとしたら、どのような変化が起こると思われるでしょうか。
以上です。では、また明日(^-^)v
(当該内容は、私の所属する組織とは一切関係はなく、全ての文責は私個人に属します。)
テーマについて、ご要望あれば、コメントをどうぞ。
◇病院経営の見える化について公開講座(動画)の講師をする機会を頂きました。感謝(^_^)
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この記事を書いたのは、こんな人。
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中神勇輝。地方の中小病院に勤務する医事課畑出身の企画部門所属。
中小企業診断士、医療経営士1級。
趣味は、マラソン、ドラム、家庭菜園、筋トレ(HIIT)、読書。