【理論と実践】「集団思考型マインドセット」が組織を蝕む
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令和7年3月12日 医療・介護経営の理論と実践 2495号
■「集団思考型マインドセット」が組織を蝕む
中神勇輝(なかがみゆうき)
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おはようございます。中神です。
前回の記事では、「異論を唱える義務」がいかに組織を強くするかについて考察しました。
今回は第2章として、その対極にある「集団思考型マインドセット」に
ついて掘り下げます。その1回目です。
宇田左近氏と黒川清氏による著書「なぜ、『異論』の出ない組織は間違うのか」では、
日本の組織に根付いた「集団思考型マインドセット」が、
いかに組織の健全な発展を阻害しているかが鋭く分析されています。
■責任回避のメカニズム
「集団思考型マインドセット」の最大の特徴は、
責任を回避する巧妙な思考にあります。
例えば、「無難な」事業計画の作成は、その典型例といえます。
人間、責任を負いたくないです。
そんな時、私たちは、達成可能な低い目標を設定するか、
漠然とした逃げ道のある目標を立ててしまいがちです。
そして、責任の所在があいまいな計画が作られます。
身に覚えのある方もいると思います。
「当の事務方たちは「上司の指示によって予測の数字を立てた」
というだけで、何の責任も負わない。
あえてアイディアを出して、「まだこのようなこともできますよ」
などと言う人は出てこないのだ。」(引用)
ということです。こうして「下振れ計画」が策定され、
成り行きで経営がなされる状況が生まれます。
「集団思考型マインドセット」においては、
不確実性を持った新しい施策はやってはいけないことなのだ。」(引用)
結果、業績が悪化しても、改善策が打たれることはありません。
茹でガエルの例えで言われるように、いつの間にか致命的な状態に陥りかねません。
■先送りの罠
「集団思考型マインドセット」の二つ目の特徴は、
「先送りをもって是とする」姿勢です。
「不確実性の下で何らかの判断を行なうよりも「先送りをもって是とする」」(引用)
ビジネスの世界では「20-80のルール」があります。
「物事は20%のことを調べれば80%のことがわかるが、
残りの20%を知るために調べるには膨大な時間と労力がかかる。」(引用)
競争環境では、この段階(20%の調査)で行動に移し、
実践しながら考えていくことが優位性をもたらします。
「競合優位性を考えたら「20-80」の段階で行動に移り、
行動しながら考えていくほうが優位に立てる確率は大きいという考え方だ。」(引用)
しかし「集団思考型マインドセット」では、「悉皆的調査の罠」に陥ります。
すべてを調査し尽くそうとするあまり、行動が遅れ、機会を逃してしまいます。
また、「バックフィット」と「バックチェック」の使い分けも責任回避の手段となります。
「バックフィットは安全指針などの変更の際、過去に遡及して規制がかかるので、
判明した時点で補強が義務づけられる。
一方バックチェックというのは、いわばそのような強制力を逃れる方便のような和製英語だ。
一応事業者が自主点検するが、その結果の対応は事業者に任せられる。
またその結果も特に報告の義務はない。この場合は規制する側の責任も問われない。
ひとたび問題が起きた時にも、 事業者の責任となり、
規制する側の責任は回避される仕組みだ。」(引用)
さらに、「検討中」という言葉は、実質的に「先送り中」を意味します。
「「やっています」ということは先送り中ですということと同じ意味ということが
相互に理解されている。」(引用)
■権限至上主義と手続き論
「集団思考型マインドセット」の三つ目の特徴は、「権限至上主義」です。
組織内では、スキルや能力よりも権限が重視されます。
「スキルの有無ではなく、権限の有無、
権限のある立場に立つかどうかということにすべて依存する。」(引用)
このような環境では、部門を超えた「横展開」よりも、
上下関係を重視した「縦展開」が優先されます。
「一部民間企業経営では常識の「横展開」あるいは「水平展開」よりも
「縦展開」が重視されることになる。」(引用)
権限のない人が異論を唱えることなど考えられないため、
自然と「前例踏襲」が当たり前となります。
「権限のないものが、他部署あるいは責任ある立場の人に対して
異論を唱えるということなどあり得ない世界なので、
当然のことながら「異論を唱える義務」というのもありえない。」(引用)
また、「手続き論」への異常なこだわりも特徴的です。結果よりも手続きが重視され、
成果を出すために動く民間出身者にとっては大きな障壁となります。
「結果を出すために煩雑な手続きを飛ばしても何としても成果を上げることを
良しとしてきた人たちの足元をすくうのは、多くはこの手続き論となる。」(引用)
以上です。いかがでしたでしょうか。
わかるわかる、という内容が多くあったのではないでしょうか。
この構造、どうすれば打開できるのか、
第3章で紹介されているようですので、楽しみです。
では、また明日(^-^)v
(当該内容は、私の所属する組織とは一切関係はなく、全ての文責は私個人に属します。)
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この記事を書いたのは、こんな人。
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中神勇輝。地方の中小病院に勤務する医事課畑出身の企画部門所属。
中小企業診断士、医療経営士1級。
趣味は、マラソン、ドラム、家庭菜園、筋トレ(HIIT)、読書。