【理論と実践】トヨタ流マネジメントに学ぶ 病院事務職の「働き方改革」
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令和7年3月17日 医療・介護経営の理論と実践 2500号
■トヨタ流マネジメントに学ぶ 病院事務職の「働き方改革」
中神勇輝(なかがみゆうき)
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おはようございます。中神です。
今日は、「トヨタ 仕事の基本大全」(OJTソリューションズ)の学びをシェアします。
■「現地・現物」の精神で医療現場を見つめ直す
「「現場を見ることによって真実が見える」というトヨタの現場で重視されている考え方。
物事の判断は、現場で実際に起きていること、
商品・製品そのものを見て行なうべきだとされる。」(引用)
トヨタが大切にしている「現地・現物」の考え方は、
病院事務職にとって非常に示唆に富んでいます。
医事課のように、患者さんと接する事務職は別ですが、
多くの事務職は、事務所から出ることなく業務をこなしがちです。
しかし、実際の診療現場や患者さんの動線を自分の目で確認することで、
多くの気づきが得られる、ということをあらためて感じます。
例えば、受付から会計までの患者さんの流れを実際に追ってみると、
待ち時間が長くなる原因や、案内表示の不備など、
データ上では見えてこない問題点が浮かび上がります。
医療現場の「現物」を直接見ることで、業務改善のヒントが見つかるはずです。
■「横展」で成功事例を院内全体に広げる
「「横展開」の略。トヨタ生産方式の用語で、あるラインや作業場などで
成功した対策をほかの類似のラインや作業場に展開すること。」(引用)
病院内の各部署で生まれた良い取り組みは、積極的に他部署にも広げていくべきでしょう。
例えば、外来の予約システムで成功した工夫を検査部門にも応用したり、
効果的だった書類整理の方法を他の部署にも展開したりすることで、
病院全体の業務効率が向上します。
私たち事務職員は、部門間の橋渡し役として、この「横展」を促進できる立場でもあります。
「うちの部署だけ」という縦割り意識を捨て、
良い取り組みは積極的に共有していく仕組みづくり、関係性づくりが重要です。
■ 「視える化」で問題点を早期発見
「情報を組織内で共有することにより、現場の問題の早期発見・効率化・改善に役立てること。
図やグラフにして可視化するなどさまざまな方法がある。」(引用)
病院事務の業務においても、数値やプロセスの「視える化」は非常に有効です。
待ち時間の推移、書類処理のボトルネック、請求漏れの発生箇所など、
これまで感覚的にしか把握できていなかったものを数値化・図示化することで、
誰もが同じ情報を基に議論できるようになります。
私の経験では、経営状況や各部署の実績をグラフ化して掲示したことで、
経営意識が高まり、経営改善・業務改善の取り組みにつながりました。
目に見えない問題は解決できません。まずは「視える化」から始めてみましょう。
■ 「人財」としての意識改革
「トヨタが社員のことを「コスト」(人件費・費用)ととらえず、
「人財」として扱ってきたことが関係しています。」(引用)
病院経営においても、職員を単なるコストとして見るのではなく、
成長する「人財」として捉える視点が必要です。
特に事務職は「縁の下の力持ち」として評価されにくい立場ですが、
患者サービスの向上や経営効率化に大きく貢献できる存在です。
自分自身も「人財」としての自覚を持ち、常に学び、成長する姿勢を持ちたいものです。
自分が担う業務の知識だけでなく、診療報酬、接遇や業務改善、ITスキルなど、
多方面のスキルを磨くことで、病院にとってかけがえのない「T型の人財」となれるでしょう。
■ リーダーシップは役職ではなく姿勢から
「たとえ管理職の肩書はなくても、部下や後輩が一人でもいれば
リーダーシップを発揮しないといけませんし、
大小問わずプロジェクトを任されれば立派なリーダーです。」(引用)
病院事務の世界でも、管理職でなくてもリーダーシップを発揮できる場面は多くあります。
新人指導、小さなプロジェクト、日々の業務改善など、
自分の置かれた立場で最大限の責任を果たすことがリーダーシップの第一歩です。
私自身、入職3年目で新館建築の患者・職員動線検討のチームを任されたとき、
最初は不安でしたが、「自分がリーダーだ」という自覚を持って取り組むことで、
周囲も自然と協力してくれるようになりました。
肩書きや経験年数ではなく、自ら汗をかき、
率先して動く姿勢がリーダーシップの本質と実感しています。
■ 「動いている」と「働いている」の違い
「体は動いて忙しそうに見えても、価値を生むような生産的な動きになっていなければ、
働いているとはいえません。」(引用)
この言葉は、特に事務職の私たちにとって痛烈な問いかけです。
忙しく動き回っていても、それが患者さんや病院にとって価値を生み出していなければ、
本当の意味で「働いて」いるとは言えません。
例えば、同じ資料を何度も作り直したり、
必要のない会議に時間を費やしたりすることは「動いている」だけで
「働いている」とは言えないでしょう。
常に「自分の仕事は誰のためになっているか」「どんな価値を生み出しているか」を
問い続けることが、真の生産性向上につながります。
■ 「T型人材」を目指して
「専門分野を軸に幅広いスキルをもつ多能工の考え方は、
「T型人材」と言い換えられます。」(引用)
病院事務職においても、診療報酬請求や医療統計など、自分の専門分野をしっかり持ちつつ、
関連する分野の知識も幅広く持つ「T型人材」が求められています。
例えば、保険請求のスペシャリストでありながら、経理や建物管理の情報にも詳しく、
企画もできる人材は、病院にとって大きな強みとなります。
日々の業務の中で、自分の担当外の仕事にも積極的に関わり、
知識やスキルの幅を広げる努力の積み重ねが、信頼とスキルを底上げします。
「それは私の担当ではない」という考え方ではなく、
「次は私がやってみよう」という姿勢が大切だと感じています。
■ 問題を問題として認識する力
「多くの会社では、「問題があるのに問題視していない」という状態が放置されています。」(引用)
この指摘は非常に重要です。
病院事務の現場でも、長年の慣習で非効率な業務が「当たり前」として続けられていることがあります。「昔からこうやってきた」という理由だけで、
問題を問題として認識できていないケースが少なくありません。
特に事務業務は数値化しにくいため、問題の所在がわかりにくいのが実情です。
だからこそ、常に「より良い方法はないか」「なぜこの手順が必要なのか」と
問い続ける姿勢が重要だと思います。
■「人を責めずに、しくみを責めろ」
「上司は「(自分が)部下にやらせるべきことを徹底できていなかったから不良が出た」、
つまり、やらせ方が悪かったから不良を出してしまったと考えます。」(引用)
レセプト返戻や入力ミスが発生したとき、個人を責めるのではなく、
なぜそのミスが起きたのか、システムやプロセスの問題はないかを検証することが重要です。
例えば、同じミスが繰り返し発生するなら、マニュアルの不備やチェック体制の不足など、
仕組みの問題を疑うべきでしょう。
ミスをした個人を責めるだけでは同じ問題が繰り返されます。
「人を責めずに、しくみを責めろ」の精神で、
再発防止に取り組むことが真の解決につながります。
トヨタの仕事の基本から学ぶことは、病院事務職にとって非常に多いと感じています。
医療と製造業は異なる分野ですが、「現場主義」「改善の文化」「人財育成」など、
共通する基本理念は数多くあります。
これらの考え方を日々の業務に取り入れることで、
患者さんにとっても、職員にとっても、より良い病院づくりに貢献できそうです。
以上です。では、また明日(^-^)v
(当該内容は、私の所属する組織とは一切関係はなく、全ての文責は私個人に属します。)
テーマについて、ご要望あれば、コメントをどうぞ。
◇病院経営の見える化について公開講座(動画)の講師をする機会を頂きました。感謝(^_^)
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この記事を書いたのは、こんな人。
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中神勇輝。地方の中小病院に勤務する医事課畑出身の企画部門所属。
中小企業診断士、医療経営士1級。
趣味は、マラソン、ドラム、家庭菜園、筋トレ(HIIT)、読書。