【理論と実践】増加する高齢者医療のニーズと、それを支える多角的な取り組み

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令和7年8月6日 医療・介護経営の理論と実践 2641号

■増加する高齢者医療のニーズと、それを支える多角的な取り組み

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おはようございます。中神です。

今回は、超高齢社会である日本において、
ますます重要性が高まる「高齢者医療」について紹介します。

■人口と意識の変化

日本では、2040年に向けて人口構造が劇的に変化しており、
入院患者に占める75歳以上の割合は2023年には57.2%に達しています。

(令和7年度第3回 入院・外来医療等の調査・評価分科会)

この変化に伴い、医療ニーズは「治す医療」だけでなく、
複数の慢性疾患や介護ニーズを抱える高齢者を「治し、支える医療」へと大きく転換しています。
また、多くの国民が住み慣れた地域や
自宅での療養・看取りを希望する意識の変化も背景にあります。
これには、診療報酬の動きもあります。
このような状況に対応するため、医療現場では多角的な取り組みが進められています。

■高齢者医療が直面する課題と背景

・複数の慢性疾患と複雑な病態、ADL(日常生活動作)の維持・向上

高齢者は複数の疾患を抱えることが多く、
薬物療法における弊害やアドヒアランス低下のリスクも高まります。
(アドヒアランスとは、患者さんが治療方針の決定に参加し、治療を受けること)

入院を機にADLが低下する「廃用症候群」の予防や、
早期からのリハビリテーションが重要です。
診療報酬で評価されている通りです。

・増加する高齢者救急と医療従事者の負担

高齢者の救急搬送は年々増加しています。
特に、都市部では、受け入れ困難な事例も多く、搬送時間も延長傾向にあります。
不要不急な搬送、望まない搬送を防ぐため、事前の意思決定支援が求められています。

これらの高齢患者へのきめ細やかなケアは、
医療従事者の業務負担増につながるため、効率化が課題と言えるでしょう。

■高齢者医療を支える主な取り組み

新たな地域医療構想では、
地域特性に応じた医療機関の機能分化・連携が推進されています。
「高齢者救急・地域急性期機能」や「在宅医療等連携機能」などを明確化しています。
診療報酬では、高齢者の中等症急性疾患に対応する
「地域包括医療病棟」が新設され、救急患者の受け入れ体制を強化しています。

・多職種・多機関連携の強化

かかりつけ医機能として、患者の日常的な健康管理から治療、
介護連携までを総合的かつ継続的にサポートする役割が重視されています。
診療報酬においても「機能強化加算」や「地域包括診療料」などで評価され、
介護支援専門員との連携強化も促されています。

・入退院支援

入院前から地域連携を強化し、患者さんが安心して
住み慣れた地域へ退院できるよう、「入退院支援加算」や「入院時支援加算」などで、
多職種連携による支援として、診療報酬でも評価されています。

・ADL向上とポリファーマシー対策

リハビリテーション・栄養・口腔ケアの一体的推進も重要なテーマです。
入院早期からのリハビリテーション、
GLIM基準に基づく栄養管理、口腔ケアなど、
多職種連携による包括的なケアが求められています。

また、高齢者の多剤服用による有害事象を防ぐため、
薬剤の適正使用に向けた取り組みが進められています。

・ICT活用と医療DX

医療従事者不足の解消や効率的な医療提供のため、
遠隔診療・オンライン診療(D to P, D to P with N)の推進が進み、
特に精神疾患や呼吸器感染症などで活用が拡大しています。

「全国医療情報プラットフォーム」の整備により、
医療機関や多職種間での情報共有が促進され、
地域のかかりつけ医機能の確保に貢献します。

・働き方改革とタスク・シフト/シェア

看護職員の負担軽減のため、ICT・AI・IoTの活用や、
看護補助者の配置・増員、業務の細分化・明確化が進められています。

■これから

高齢者医療は、患者さんの尊厳とQOL(生活の質)を重視し、
地域全体で支え合う体制を構築することが求められます。
労働人口が減少する中で、働き方そのものを抜本的に変えなければ、
持続していくことは困難です。

患者さん、そして職員が、地域で安心して暮らして、働いて、
生きていけるようよう、これらの取り組みを推進してことが求められますね。

以上です。では、また明日(^-^)v

(当該内容は、私の所属する組織とは一切関係はなく、全ての文責は私個人に属します。)

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この記事を書いたのは、こんな人。
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中神勇輝(なかがみゆうき)。地方の中小病院に勤務する医事課畑出身の企画部門所属。
中小企業診断士、医療経営士1級。
趣味は、マラソン、ドラム、家庭菜園、筋トレ(HIIT)、読書。

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