【理論と実践】最低賃金大幅引上げと医療機関の対応
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令和7年8月9日 医療・介護経営の理論と実践 2644号
■最低賃金大幅引上げと医療機関の対応
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おはようございます。中神です。
先日、第71回中央最低賃金審議会で、
令和7年度の地域別最低賃金額改定の目安について答申が取りまとめられました。
■以下は、厚生労働省からの発表内容
(ランクごとの目安)
各都道府県の引上げ額の目安については、Aランク63円、Bランク63円、Cランク64円。
(都道府県の経済実態に応じ、全都道府県をABCの3ランクに分けて、引上げ額の目安を提示)
現在、Aランクで6都府県、Bランクで28道府県、Cランクで13県となっている。
(参考)各都道府県に適用される目安のランク
Aランクは、
埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪で、63円。
Bランクは、
北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、
富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、
滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、
広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡で、63円。
Cランクは、
青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、
熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄で、64円。
仮に目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合の全国加重平均は1,118円。
この場合、全国加重平均の上昇額は63円(昨年度は51円)となり、
昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額となります。
また、引上げ率に換算すると6.0%(昨年度は5.1%)となります。
増加額としては、63円または64円と、ほぼ同じです。
ただ、増加率は、元々の金額から計算されるので、地域によって、増加率は変わってきます。
元々、賃金が高い都心部にとっては、増加率は低くなりますし、
地方は、増加率が高くなるところが多いでしょう。
今後は、各地方最低賃金審議会で、
この答申を参考にしつつ、地域における賃金実態調査や参考人の意見等も踏まえた調査審議の上、
さらに答申を行い、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定する、
とのことです。
■病院の収入構造と人件費
さて、これらは、人件費に直結する大きな変化、と言えるでしょう。
病院側としても、従業員の賃金は上げたい!
これは、間違いないです。
しかし、賃金を上げるためには、その原資が必要です。
原資は、患者さんからいただく医療費です。
その医療費は、公定価格。
つまり、法律で決まったからといって、
容易に給料を上げられるか、というと、そうではない、ということです。
患者さんの症状に合わせて治療や検査を実施するのが原則です。
不要な治療や検査をすれば、収入を上げることはできるかもしれませんが、
そういう訳にはいきません。
とはいえ、経営努力は必要ということで、
収入アップに取り組む訳ですが、
前述の通り、公定価格という制約の中で、できることには限界があります。
また、決められた制度内で努力をしても、
診療報酬改定で、適正化という名のもと、診療行為の単価が下げられます。
(ただ、上がる場合もあり、それは、評価と言われます)
まず、このような収入を上がりにくい状況であることを理解する必要があります。
■これから求められる意識改革と行動変容
医療の専門職で、最低賃金を割っているようなことは、そうそう無いと思います。
専門職の資格手当があるからです。
ただ、事務職などの国家資格を持たない職種が悩ましいところです。
診療報酬のベースアップ評価料でも対象職種から除外されているため、
原資が確保しにくい状況です。
しかし、実際のところ、事務がいないと、病院は回らないのも事実です。
その事務を冷遇する限り、病院に未来はないでしょう。
今後、事務職としてできること、持つべき視点は、
「効率性を高めていくこと」に尽きると思います。
もちろん、事務職に関係なく、
医療専門職でも電子カルテ・パソコンの入力が苦手だったり、
ICTの活用が不十分だったり、しなくても良い会議が多かったり、
いろいろ無駄があるものです。
これらは、見えにくいコストであり、広い意味で、人件費と言えます。
この部分の効率化が、
これからの少子高齢化・生産性向上が叫ばれる時代に必須の取り組みです。
医療現場は特殊だから、ということで、手をつけられていない部分でもありますので、
ここに如何に手を加えていくか。
まさに、病院職員の意識改革と、行動変容が求められる時代ですね。
以上です。では、また明日(^-^)v
(当該内容は、私の所属する組織とは一切関係はなく、全ての文責は私個人に属します。)
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中神勇輝(なかがみゆうき)。地方の中小病院に勤務する医事課畑出身の企画部門所属。
中小企業診断士、医療経営士1級。
趣味は、マラソン、ドラム、家庭菜園、筋トレ(HIIT)、読書。