【理論と実践】令和8年度診療報酬改定:「真水」による大幅改定が待ったなし

~医療・介護に関わる職員が、安心して、仕事の生産性高く、充実して働ける未来の一助へ~

ご友人等へのメルマガ紹介はこちらから。
https://www.mag2.com/m/0001682907

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
令和7年12月14日 医療・介護経営の理論と実践 2771号

■令和8年度診療報酬改定:「真水」による大幅改定が待ったなし

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

おはようございます。中神です。

■医療現場からの悲鳴

2026年度の診療報酬改定をめぐる議論が本格化する中、
医療界からは強い警告が上がっています。
現在の医療経営の危機的状況は、単なる経営不振ではなく、
地域医療体制そのものの崩壊リスクと言えます。

最新の医療経済実態調査が示す数字は衝撃的です。
病院の約7割、診療所の約4割、歯科診療所・薬局の約3割が赤字経営に陥っており、
閉院・倒産は過去最多のペースで進行しています。
これは業界として「かつてない異常事態」と表現されるほどの深刻さです。

■診療報酬が社会情勢に追いついていない

問題の根本は何でしょうか。

それは、診療報酬改定が、
急激な物価高騰と人件費上昇に追いついていない、という現実です。

診療報酬は原則2年ごとに改定されます。
その間の社会情勢の変化を適切に反映すべきです。

しかし現実には、2年間の賃金・物価動向が十分に反映されていません。
令和7年度の最低賃金がプラス6%強、人事院勧告がプラス3.62%であるのに対し、
医療機関はこれらの水準に対応できる状態ではありません。

■賃上げが人材確保を支える

医療の質を守るには、医療従事者の確保が不可欠です。
しかし、現状では、医師・歯科医師・薬剤師といった医療人材が
他産業へ流出する危機に直面しています。

給与費は上昇していますが、他産業の賃上げをはるかに下回っており、
特に歯科衛生士や薬局事務職の給与水準は依然として低い状態です。
この状況が続けば、医療人材の流出に歯止めがかからず、
地域医療提供体制に支障が生じることが危惧されます。

■物価高騰への対応には限界がある

医業経費全般の高騰も深刻です。
給与費、材料費はもとより、歯科材料の急騰(特に金パラ価格)、
医薬品供給不足に伴う備蓄管理コストなど、
医療機関が自助努力で対応できる範囲を超えています。

特に小規模薬局は経営がひっ迫しており、
さらなる賃上げと物価高騰への同時対応は「極めて困難」な状況です。

■医療DXも含めた包括的な支援が必要

医師等の働き方改革を推進する過程で、医療DXの重要性が認識されました。
業務効率化に有効なDX推進ですが、ここでも課題があります。

導入時の費用支援だけでなく、維持費用、電子化対応費、
サイバーセキュリティ費用といった継続的な負担が必要です。
さらに、DX対応が難しい医療機関も視野に入れた工夫が求められています。

■「真水」による大幅改定

医療界が強く求めているのは、単なる調整ではなく「思い切った対応」です。

これまで「適正化」という名目で社会保障費は削られ続けてきました。
しかし2026年度改定は異なります。骨太方針に示されているとおり、
純粋に上乗せする「真水」による財源確保が不可欠です。

これは、賃金上昇と物価高騰、高齢化、医療の高度化・技術革新に同時に対応し、
医療機関の経営基盤を強化するための改定であるべきなのです。

■医療提供体制全体の維持という視点

重要なのは、病院・診療所・薬局といった個別機関の経営改善ではなく、
医療提供体制全体の機能維持という視点です。
分断的な改定率議論ではなく、医療界一丸となって対応する必要があります。

公定価格で運営される医療機関等が、継続的かつ安定的に人材確保と賃上げを
実現し、物価高騰に対応するためには、十分な財源措置が急務です。
2026年度改定は、地域医療の未来を左右する極めて重要な改定となります。

以上です。では、また明日(^-^)v

(当該内容は、私の所属する組織とは一切関係はなく、全ての文責は私個人に属します。)

テーマについて、ご要望あれば、コメントをどうぞ。

◇病院経営の見える化について公開講座(動画)の講師をする機会を頂きました。感謝(^_^)
https://hcmi-s.net/weblesson-hcm/jmp_consult_01/  (講座)
https://healthcare-mgt.com/article/iryo/jmp_consulting01/  (紹介)

◇過去の内容、記事はこちらから是非(^-^)
https://wakuwaku-kokoro.net/

◇試験勉強や本の学びをアウトプットしているYouTubeチャンネルは、こちらです(^-^)
https://youtube.com/channel/UC_PiglYG9qTBjlJ3jt3161A

この記事を書いたのは、こんな人。
ーーーーーーーーーーーーーーー
中神勇輝(なかがみゆうき)。地方の中小病院に勤務する医事課畑出身の企画部門所属。
中小企業診断士、医療経営士1級。
趣味は、マラソン、ドラム、家庭菜園、筋トレ(HIIT)、読書。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA