【理論と実践】日本の医療機関のデジタル化の課題

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令和5年7月19日 病院経営の理論と実践 1893号

■日本の医療機関のデジタル化の課題

中神勇輝(なかがみゆうき)
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おはようございます。中神です。

〜今日のテーマ〜

本日の内容は、 医療経営士1級受験対策ということで学びをシェアしていきたいと思います。
(長英一郎さん作成の問題集より)

今回は、

「日本の医療機関のデジタル化の課題」について考えてみましょう。

前回に続き、大事なテーマですね。
生産性向上といえば、「デジタル化」と言えるでしょう。
また、DX化という話もよく聞きます。
しかし、そもそもデジタル化が進んでいない、という大きな課題があります。

それはなぜでしょうか?

まず、電子カルテという観点から考えます。

クリニックや中小病院には、まだまだ紙カルテで運用している医療機関が多いです。
開業医の先生方の高齢化も進んでいます。
電子カルテは導入コストが高く、また、システム変更に時間や労力もかかりますので、
簡単に導入することはできません。

当然ですが、紙カルテののままで、病院・施設間での電子的な医療情報の共有には限界があります。

次は、マイナンバーカードの視点で考えてみましょう。

まず、カードリーダーの普及が進んでいないことが挙げられます。
仮にリーダーの機械が入っていたとしても、形だけの設置の医療機関もあるでしょう。
レセコンと連動していないため、余計に手間が発生する(目視からのレセコンへの手入力など)という医療機関もあります。
診察で活用するには、レセプトデータのため、情報がやや古くて活用できない、ということもあります。
電子処方箋の前提となるオンライン資格確認もまだまだ進んでいない状況です。

患者さん側の事情もあります。
今までの習慣である紙の保険証や紙の処方箋からの脱却は簡単ではありません。
マイナンバーカードや電子処方箋に代わることに対応できない年齢層の人もあるでしょう。
現状、「やれる人からやってください、ポイントも付けますよ」という状況です。
強制的に一斉にやることも一つですが、そのための啓蒙普及活動もセットで行う必要があります。
その点、エストニアという国の活動は参考になると思います。
キャラバン隊で、普及活動をされたそうです。
また、資金はEUのバックアップを受けて、国が全面的に出したとのこと。
日本では、お財布事情や方針の異なる医療機関に任せているため、どうしても統一性に欠けます。

最後に、個人情報の観点です。

セキュリティーの課題があります。
そのため、他の病院や他の施設との電子的な医療情報の共有に足踏みしている医療機関が多いです。
また診療情報(カルテの情報)の所有権は病院側にある(秘匿性がある)ということや、
ベンダーによる電子カルテの仕様の違い、規格が標準化・統一化されていないために、
病院間でお互いの診療情報を相互参照することはシステムの仕組み上でも難しいのが現実です。

最後、まとめます。

日本のデジタル化の遅れには、

紙カルテの医療機関がまだ多くあること、
電子カルテの導入コストが高いこと、
セキュリティーに対し、過敏であること、
マイナンバーカードやリーダーの普及が不十分であること、

などがあります。

今後も、各医療機関の努力目標のままでは、なかなか進め切ることは難しいでしょう。
やるならトコトン推し進める必要があります。
しかし、日本に財源がない、病院も利益が少ない、という点からも簡単ではありません。

HL7FHIRといった規格等による電子カルテの標準化・低価格化への期待、
国の施策と医療機関の状況がかみ合う時まで、資金の確保、DX戦略を練っておく必要がありますね。

以上です。では、また明日(^-^)v

(当該内容は、私の所属する組織とは一切関係はなく、全ての文責は私個人に属します。)

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この記事を書いたのは、こんな人。
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地方の中小病院に勤務する医事課畑出身の企画部門所属にする医療経営士2級。
名は、中神勇輝。2023年、医療経営士1級を受験予定。
(可能なら中小企業診断士も受験する予定。)
趣味は、ドラムと家庭菜園と筋トレ(HIIT最高!)と読書。