【理論と実践】「異論を唱える義務を課す」組織を創出するには

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令和7年3月14日 医療・介護経営の理論と実践 2497号

■「異論を唱える義務を課す」組織を創出するには

中神勇輝(なかがみゆうき)
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おはようございます。中神です。

前回までの記事では、「異論を唱える義務」の重要性と、
その対極にある「集団思考型マインドセット」の危険性について考察してきました。

この第3章では、実践編として「異論を唱える義務を課す」組織を
どのように創出するかについて、宇田左近氏と黒川清氏の知見をもとに解説します。

■変革への抵抗を理解する

「集団思考型マインドセット」に侵食された組織を変えるのは容易ではありません。
著者は次のように警告しています。

「抜本的な組織変革を図ろうとする場合、
その抵抗を打破するためには通常の企業変革を超えた、
周到なアプローチが必要となる。」(引用)

既存の組織は、変革に対して様々な形で抵抗します。
特に注意すべきは、「異論を唱える人間は体よく排除されていく」という現象です。
組織の長期低迷や優秀な人材の流出などの警鐘を無視すると、
いずれ大きな問題として表面化することになります。

「業績の長期低迷、優秀と言われる人材の流出などの組織から発せられる警鐘を
放っておくと、どこかで一気に問題が表面化する。」(引用)

変革を進めようとする人々は、「形式主義とその操作」などあらゆる手段を
使った抵抗に遭う可能性があります。
この抵抗の強さを理解し、対策を講じることが重要です。

■改革チームの作り方

変革を成功させるためには、経営トップの明確なビジョンと、
それを実行するための強力な改革チームが必要です。

「経営トップとしては、軸ブレせずに、前例なき課題解決の必要性と
その目的を明確にしたうえで、改革の中心となるチームを創出し
具体的な問題を解決させながら、それを素早く拡大させていくことが求められる。
抵抗側に余裕を与えない圧倒的なスピード感が必要だ。」(引用)

改革チームには、多様なバックグラウンドを持つメンバーを集め、
「異論を唱える義務」を課すことが重要です。

「多様性を持ったチームメンバーを招聘し、チームリーダーを中心にして、
そのチームのメンバーに「異論を唱える義務」を負わせながら具体策を決定し、
前に進めていくことだ。」(引用)

チーム構成においては、年齢や性別、キャリアなどの多様性を意識的に取り入れるべきです。

「もっと意識的に多様性を考えてチームアップしたほうがよい。
年齢性別も関係なく、また異なった視点を持った外部人材をチームに加えることは
有効だが、社内外のキャリアも多様な人をそろえるほうがよい。」(引用)

■チーム立ち上げの重要ポイント

著者は、チームを組成する際に経営トップとチームリーダーの間で
確認すべき5つのポイントを挙げています:

「チームを組成していく際に、少なくとも以下の五点については経営トップと
チームリーダー、あるいはそのプロジェクトのプロジェクトマネージャーと
なるべき人材との間でスタート前に直接、十分に確認する必要がある。
・誰が「クライアント」なのか(誰に価値を提供すればよいのか)。
・何を達成したいのか、インパクトは何か、どのようなインパクトを出せば成功と言えるのか、
それは社会的に意味を持つことなのか。
・解くべき課題は何か。
・プロジェクトのチームの構成員の多様性を担保できているか、共通の目的を持っているか。
・チームに対していかに「異論を唱える義務」という環境を浸透させるのか。」(引用)

これらのポイントを明確にすることで、チームの方向性と目的が共有され、
効果的な活動が可能になります。

■チームリーダーの役割

改革の成否を左右する重要な要素が、チームリーダーの力量です。

「チームリーダーとしては、通常のプロジェクトマネジメント力に加えて、
相手の行動様式を理解し先手を取っていくことが必要となる。
チームリーダーの力量が成否のカギを握るといっても過言ではない。」(引用)

特に組織風土の改革においては、課題解決力以上に、課題発見力が求められます。

「課題解決力よりも、むしろ課題を発見して解ける形にしていくことにあると言っていい。」(引用)

また、チームリーダーには、メンバーの成長を促す役割も期待されます。

「チームリーダーには「優秀な人たちに成長機会を提供できたか」
という評価の軸を適用すべきだろう。」(引用)

■「Day1仮説」とスピード感

改革を効果的に進めるための重要なアプローチとして、
著者は「Day1仮説」を提案しています。

「最初の課題分析が一通り終わり、また初期の抵抗圧力が見えてきた段階で、
まずは課題とその解決方向の仮説を文字にしてみる。」(引用)
「自分自身で思い切って書ききってみることをお勧めする。
常に新たな事実が発見されるたびにそれを書きなおしていけばよい。」(引用)

この「Day1仮説」をもとに、プロジェクト全体のスケジュールを設定します。

「Day1仮説」を設定する時点でそのプロジェクト期間全体の予定、
例えば六カ月の計画を立てる。
同時に三カ月、二カ月、一カ月、二週間、一週間といった期間のスケジュールを
プロジェクトのチームリーダー自身で書いてみる。」(引用)

抵抗勢力に余裕を与えないスピード感も重要です。
「集団思考型マインドセット」が好む「悉皆的調査」ではなく、
「20-80ルール」に基づいた素早い行動が必要となります。

■具体的なアクションと成果の可視化

最終的に重要なのは、具体的な成果を出し、改革の意義を組織内外に示すことです。

「既存のライン組織の中に、「異論を唱える義務」を負うチーム環境を創出できれば、
そこから前例のない課題の解決策を生み出していくことが可能になる。」(引用)
「一方その間、そのチームには既存組織からはあらゆる圧力がかかる。
面従腹背、ポリティカルな圧力、メディアを用いた反対キャンペーンなど
あらゆる抵抗を受ける。その中で期間内に具体的なインパクトを出しながら、
その意義を内外に示し、自ら存在意義を主張していくことができれば
形勢は一気に有利になる。」(引用)

「異論を唱える義務を課す」組織の創出は、既存の「集団思考型マインドセット」との闘いです。
しかし、明確なビジョン、多様性のあるチーム、強力なリーダーシップ、
そして具体的な成果の積み重ねにより、組織文化を変革することは可能です。

自分たちの組織でも、このような改革チームを作る機会があれば、
今回ご紹介した視点を参考にしてみてはいかがでしょうか。
「異論を唱える義務」を持つ組織は、変化の激しい時代において、
より強靭で創造的な存在となるはずです。

以上です。では、また明日(^-^)v

(当該内容は、私の所属する組織とは一切関係はなく、全ての文責は私個人に属します。)

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この記事を書いたのは、こんな人。
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中神勇輝。地方の中小病院に勤務する医事課畑出身の企画部門所属。
中小企業診断士、医療経営士1級。
趣味は、マラソン、ドラム、家庭菜園、筋トレ(HIIT)、読書。

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