【1001】地域包括ケアシステムを作る関係機関の役割と連携の形
日々の学びや気づきを言語化し、行動を変え、未来を変える一助に。
月曜日です。週の初め、如何お過ごしでしょうか。
平日ですので、通常通り、医療・介護関係の話題に戻ります。
本日は、「地域包括ケアシステム構築のためのマネジメント戦略」という筒井孝子さんの本を読みましたので、
紹介します。
読み応えのある本でした。今日と明日は、この話題で進めますね。
どの医療機関も、「地域包括ケアシステムの構築」という言葉を無視することはできないぐらい
聞き慣れた言葉です。
実際、地域を無視して、事業を考えたり、進めたりすることは、難しいですし、
あり得ないのではないでしょうか。
それでは、中身に入っていきますね。
心に残ったのは、以下の内容でした。(すべてを網羅的に紹介したり、コメントできていない点は、ご容赦ください)
1、地域包括支援センターとケアマネジャーの役割
地域包括支援センターの役割が極めて大事、ということですね。
地域の住民、利用者、患者が抱えている課題は個人差があります。
ケアマネジャーは、その利用者の代行として、どのサービスを受けるのが良いのか、準備をする役割の方です。
その準備の際に問題になるのが、実際にサービスを提供する医療機関や施設との関係性。
そのケアマネジャーが、病院の先生、看護師、その他スタッフ、クリニックの先生など、
医療機関の人たちと連携する際に、やはりハードルが高い。
同じ院内の人でさえ、相手がどんな状況か明確には分かりませんし、
分かったとしても、仕事をお願いするにしても、躊躇したりします。
私は事務系です。医師や看護師が考えていること、コメディカル部門が考えていること、
また、その知識量、こだわり、部署の状況はもちろん違いますし、どうしたって価値観もズレます。
その中、第三者の立場で、利用者の代わりに、
医療、介護、福祉など、網羅的に知識を把握し、情報を共有できるケアマネジャーがどれだけいるでしょうか。
その人に合った社会資源の活用をすることが、そんな簡単にはいかないのが現実ではないでしょうか。
病院側の立場から考えると、退院困難な症例があるのは、現状では、致し方ない面が多分にあると感じます。
2、「Integrated Care(インテグレイテッドケア)」の理論とその応用
Integration(統合)の段階(強度)について、
「連携」と「協調」と「完全な統合」があると書かれています。
ざっくり理解を申し上げますと、
「連携」とは、必要に応じて情報を得られるような状態
「協調」とは、調整においてそれぞれの立場に応じてその責任を持って実施できる状態
「完全な統合」とは、利用者に必要なオーダーメイド的にサービスを作ることができる状態
ですね。
連携だけでも、相当、素晴らしいと思います。
この患者の病気は?
退院先の候補の空き状況は?
どの程度の医療の必要度、どの程度のADLまで受けられる?
家族との関係性は?
キーパーソンは?
色々と知りたい情報があります。
そんな中、情報を共有できるだけでだいぶ、調整の進め方も変わりますし、うまくいきやすくなります。
そして、協調、完全な統合と、単なる情報を共有しているだけでなく、
自発的に動ける、しかも個別性にフィットできる動きができるとしたら、
利用者にとっては、たいへん有り難いですよね。
ただ、どこまでの統合が必要か、というと、
すべての利用者が、「完全な統合」を必要としているかというと、そうではありません。
状況によって必要とされる統合の形は変わる、ということも認識しなければなりません。
3、垂直的統合、水平的統合とその難しさ
垂直的統合とは、急性期や回復期、生活維持のケアを同一機関で行うこと。
そして、水平的統合とは、居宅介護支援事業所、訪問看護ステーション、在宅療養支援診療所などがケアのために連携すること。
「Integrated Care」を構成するステークホルダーは
ケアマネジャー、保健所、利用者、コミュニティー、評価者、主任介護支援専門員、政策立案者、サービス提供者と幅広くあります。
これだけの関係者がいる中で、先述のような「統合」を図る道のりは、たいへん厳しいものです。
専門職による質の向上は、単発で見れば、利用者への支援の質を高める要素になります。
しかし、質の高いサービスを受けることができるというメリットがある反面、
それらが独立したものになり、タコツボ状態になればなるほど、
診断、薬剤の投与、内服、治療など、多様なサービスを受けるために、より多くの専門職のあいだを行き来しなければならない、
というデメリットも生じてきます。
自らの疾病の治療にあたってどのような医療サービスが適切であるかを判断する能力は多くの日本国民には備わっていません。
そのような教育は受けていませんし、学ぶ機会もありません。
ケアマネジャー(介護支援専門員)が介護サービスを計画を作成するにあたって
「それぞれが提供するサービス担当者間の臨床的な統合を図らなければならない」
という役割を自覚をしていたかどうかは不明である、とあります。
極めてレベルの高い役割だと思います。
これを個人レベル、1施設レベルで行うことはハードルが高いですよね。
ここで、地域包括支援センターのことも紹介されており、
当センターの本来の目的は、「医療や公衆衛生と介護のインテグレーションの推進」とあります。
それぞれの関係機関に点在している、ケアマネジャーをマネジメントする役割も課せられているように感じます。
4、利用者の個別性とデータ化の難しさ
ケアマネジャーが第一に注目すべきは、
決められた財源の中で利用者のニーズに最も適切な対処法が提案できるかどうか、
ということが書かれています。
利用者ごとに個別性がある中で、どのような施策を行うのが良いのか、非常に難しいです。
通常の事業所で行われるサービスに加え、医療を含めたサービスを必要としている要介護高齢者は、
レベルでいうと、「完全な統合」レベル(十分なヘルスサービスの統合が必要)になります。
ただし、このレベルのサービスを必要とする利用者(患者)に対して、
入院時から退院、退院して地域に戻る時までの、医療・看護・介護サービスのすべてを
インテグレーションするマネジメント能力は、これまでのケアマネージャーには期待されてこなかった、
とも書かれてありました。
そのような資格要件も、研修等も行われてこなかったことも要因のように思います。
(今後は、そういった能力も求められる、ということでしょう)
また、このレベルのインテグレーション(統合)レベルは非常に高度であり、
「多様なニーズを持つ、比較的小規模の人数が対象となる」と書かれてあり、
全員が全員、ここまでのレベルを求められる訳ではない、ということですよね。
これは、大事なポイントだと思います。
その利用者の状況に応じて、担当する方々へ限りあるパワーを意図的に偏らせて、
資源を投資をするバランス感覚も必要であり、これは、他のことに共通することですね。
データに関することも書かれていました。
2021年の介護報酬の改定でも、データ化が話題になっていますね。
・「Integrated Care」をヘルスケアシステムに取り組むためには、
そのパフォーマンスを計測する方法が必要ですが、
そのためには、目指すべきアウトカムが整理されていなければ、計測すべき数値も分かりません。
・保険者の評価について、客観的に把握することが重要であるが、エビデンスが十分に示されてきませんでした。
・サービス提供に係る情報システムの整備について、
日本で最も地域包括ケアシステムの構築が推進されている自治体の地域包括支援センターでは、
職員が当該自治体の住民の医療、介護及び健康データベースにアクセスできるところもあるようです。
・戦略マネジメントとは、地域自治体のビジョンやミッションを提示し、
これに沿った形で政策目標のプライオリティ付け、目標数字の設定を行うことです。
(ビジョンとは、自らの組織や部門の目指す将来像であり、
地域包括支援センターのビジョンとは、
1)人づくり
2)地域づくり体制作り
3)施策との連携
とのことです)
以上です。だいたい、これで、半分ぐらいですね。
終わりに
全てを網羅的にご紹介はできませんので、私のアンテナに引っ掛かったものだけですが、
病院の立場からすると、介護の関係者ともっと情報を共有したいと思いますし、
介護の方の立場からしても、医療機関とコミュニケーションを取りたいと思っていることは
間違いないです。
お互いにニーズが合致している部分はありますから、
それらを満たすことができる場の設定、システムなどを考え、実現化していけると良いです。
では、また明日(^_^)v
今後ともよろしくお願いいたします!
◇過去の内容、記事はこちらから是非(^-^)
◇メルマガ登録はこちらから(^-^)
https://www.mag2.com/m/0001682907.html
◇試験勉強、読書を通しての学び(学習方法、マインド、趣味の家庭菜園)を電子書籍にしました。
よければどうぞ。Kindle Unlimitedで読めます(^-^)