【1044】自治体病院、医療法人のあり方と経営(医療経営士テキスト「経営形態(2)」)
日々の学びや気づきを言語化し、行動を変え、未来を変える一助に。
火曜日ですね。今週も1日終わりました。季節の変わり目、少し体調を崩しました(^_^;
皆様は、いかがお過ごしでしょうか。
紹介してきた医療経営士のテキストも今回が最後です。
医療経営士テキスト「経営形態」(第2章「形態別の状況」)
です。(読書通算976日目)
目次は、以下の通りです。
第2章 形態別の状況
1.開設者別の状況
2.自治体病院の状況
3.医療法人の状況
では、中身に入って参ります。結構、難解な内容です。
【見るべき指標と役割と責任と】
病床数、平均在院日数、病床利用率、医師一人あたり1日平均入院数、
外来患者数、医師一人あたり入院数、外来患者数などで、運営状況を把握する。
自治体病院は地域の実情等に基づき設置、運営されてきたが、厳しい経営が続いたため、
経営健全化措置が行われてきた。
民間医療機関による診療が期待できない離島や山間地等の医療、
また、医療水準の向上など、重要な役割を果たす。
地域医療の確保と病院経営の健全化を両立させることが最も重要である。
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まず、役割と責任の確認ですね。
地域の医療のためにも不採算部門も担当する役割がある一方で、
経営面の健全化も求められる。
病院経営は、診療報酬という一定のルールの中で行うため、
独自の価格設定ができません。通常、希少性の高いものには高価格になりやすいですが、
医療においては、そうはいきませんよね。
ここが医療経営の難しさである、と思います。
【病院経営の3つの視点】
地域医療計画、医療供給体制の整備を図ったが、
医療費抑制政策は、病院勤務の医師の労働環境の悪化、病院経営を追い詰めてしまった。
また、新人医師の新臨床研修制度も、結果的に地域の病院で医師を確保することを難しくした。
赤字、累積欠損金が多い事業においては、
よりその収益性の向上、経常費用の合理化、効率化を発揮し、経営の健全化を推進していくことが
求められる。不良債務の発生を防ぐことも必要である。
不良債務の増加は、医師不足による診療体制の縮小、相次ぐ診療報酬のマイナス改定などが
要因として考えられる。
経営の効率化、再編、ネットワーク化、経営形態の見直しの3つの視点に立った改革に
積極的に取り組むことが必要である。
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政策によって、影響を受けるのが世の常ですが、医療介護関係は特に影響を受けやすい、
といって良いでしょう。
顧客単価が国から決められている。点数の高低が、定期的に変わる。
前述の通り、医療費抑制の動きや、臨床研修制度などが紹介されていました。
国の財政を第一に考えて取り組んだ結果、各病院の経営が厳しくなったことや、
医師の働き方を第一に考え政策を打ったことで、地域での医師の配置に弊害が起きたことなど、
バランスが難しいですね。
【借り入れと不採算部門の医療への対応】
自治体からの繰入金(他会計繰入金)。
2008年、救急救命医療、精神科医療、リハビリテーション医療などの不採算医療及び周産期医療などの
高度、特殊医療に対する繰入金が多かった。
自治体病院の経済性と公共性の調和。
地方交付税制度。市町村の財政の中で命綱ともなっている。
財政の均衡化を図り、交付の基準の設定を通じ、計画的な運営を保障し、地方団体の独立性を強化する。
普通交付税と、特別交付税がある。
一ベッドあたりいくら、建設改良費など、元利償還金に対するもの、
救急告示病院、へき地医療に対するもの、などがある。
財政健全化法の実施。
早期健全化計画あるいは財政再生計画を策定し、財政健全化を図る。
監査委員による審査、
公表が義務付けられる連結実質赤字比率や将来負担比率、
実質赤字比率、実質公債費比率といったものを算定指標としている。
資金の動きに焦点を絞る。
現金のストックという、より実質的な評価方法となっている。
公営企業に対する自治体の主導権の再確認にあるが、
現在の自治体病院改革の流れの1つは、病院経営に関する権限を自治体から病院に移す、
というトレンドも存在する。
財政健全化法と現場の流れが全く逆であるか、の印象もある。
資金不足比率の交渉。
議会に報告し、資金不足比率が基準以上となった場合は、経営健全化計画を定めなければいけない。
経営状況の悪化の度合いを示すもの。
経営黒字を達成している自治体病院の平均比率を目標とする。
経常収支比率102.3%以上、職員給与費対医業収益率50.5%以下、病床利用率82.3%以上を想定し、
取り組むことが重要である。
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紹介が長くなりましたが(^_^;
自治体病院の経済性と公共性の調和、というのは、ミソでしょうね。
もともと病院は経済性をトコトン追求しにくい部分がありますが、なおさらやりづらいことが
あるだろうと思います。
とはいえ、放置する訳にもいきませんから、対策を練る。
財政健全化法にあるような、赤字比率、資金不足比率、経常収支比率など、
自治体病院で求められる数値を自院で満たしているか引き当てるなど、経営の参考にしたいですね。
【医療法人の状況】
資金の調達の容易性、医療設備の充実、相続税の負担による医療施設の荒廃の防止、
医療経営の永続性が求められる。
医療法人になることで、多額の資金を得たり、税負担の軽減などが見込める。
持分の定めの「ある」、又は「ない」社団医療法人と分けることができるが、
医療法人の資本を拠出する社団社員の権利が医療法人財産に及ぶのかどうかが持ち分の有無のポイントである。
医療法人類型別の要件等比較表(P68からP69の一覧表、ざっと比較するには良い表)
人の命を救うという行為。
配当が許されない非営利という位置づけから、利益が目的と言いにくい面はある。
しかし、患者や地域住民がいつも通っている医療機関が地域からなくなってしまうことは
許されないので、一定の収益を上げ、財務の健全性を保つことが必要である。
決算状況で見ると、病床の利用率、平均在院日数の短縮、一人当たり医療費を高くする、
といったことが収入確保につながっている。
部門別収支の改善、合理化の推進、外来部門と入院分を分けて管理する、病棟ごとに分けて改善を図る、
給食や検査の部門の改善、事務部門はどうか、部門別に医療収支が黒字になるような工夫が必要となる。
また差額ベッド代や給食費を始めとして、患者が自分でお金を出す部分も増えてきている。
アメニティー部分などがそれである。
業務の委託や下請け日も考えられる。
寝具や検査、給食、洗濯や清掃など、病院の管理全般に委託や下請けがどんどん入ってきている。
病院経営悪化の内的要因としては、人件費の高さが挙げられる。
労働集約型産業。国家資格を持つものが多く、他業種以上に人件費の割合が高くなりやすい。
また収支低迷の内的要因として、
病院経営者のマネジメントスキルの不足と医療倫理の欠如などが挙げられる。
営利を目的とした経営感覚をそのまま医療機関に持ち込めば、
病院の収益の向上に比例し、モラルの低下が目立つようになってしまう。
また、医療機器の導入が経営を圧迫していることも一因となる。
国の政策や制度のあり方に影響を受けやすい。
しかし、その経営環境の変化に対応できてないとも言える。
経営環境の変化を受けた医療機関が基本的に取り組まなければならない課題は、
コスト管理、そして、医療の質の維持向上を両立すること。
医療の質を保つ、PDCAサイクル、TQM、クリニカルパスを始めとした管理手法の活用が質の安定化に役立ち、
組織的な質の管理の仕組みを構築することにつながる。
—–
病院経営における問題になりやすい部分がまとまっていて、興味深い内容でした。
一度、病院として立ち上げたのであれば、患者がつくことになりますから
永続的にその地域に存在し続けることは義務となるでしょう。
その地域から退散せざるを得ないこともあるかもしれませんが、
地域のニーズに合わせて形を変え、方法を変え、組織を変え、残ることのできる経営が必要でしょう。
病院で請け負う業務も変わってきていますね。
色々な業種と、業務を分担、連携し合う仕組みを作っていかなければいけない。
あとは、管理手法の研究と実践でしょう。
使い古された、しかし、有用なツールがありますから、使わない手は無いですよね。
医師に欠如しがちなマネジメントスキルをカバーするのが事務側の役割であり、プライド。
医療モラルとのバランスを保ちつつ、地域に永続する病院経営の一端を担いたいものです。
では、また明日(^_^)v
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