【1045】利益とは患者に提供する価値の対価(医療経営士テキスト「経営形態(3)」)

日々の学びや気づきを言語化し、行動を変え、未来を変える一助に。

水曜日ですね。週も真ん中です。皆様は、いかがお過ごしでしょうか。

紹介してきた医療経営士のテキストも今回が最後の最後です。

医療経営士テキスト「経営形態」(第3章「自治体病院と医療法人の選択肢」)

です。(読書通算977日目)

目次は、以下の通りです。

第3章 自治体病院と医療法人の選択肢
1.自治体病院の選択肢
-公立病院改革ガイドラインに則った経営形態の見直し
2.医療訪印の選択肢-制度改革に伴う医療法人の対応

【公立病院改革ガイドライン策定について】

・経営の効率化
・再編、ネットワーク化
・運営形態の見直し

財務内容の改善に関わる指標、公立病院としての医療機能確保に関わる指標などを見る。
例えば、経常損益の額、資金不足額、人件費率、材料費削減額、
薬剤使用効率、病床利用率、平均在院日数、患者一人当たり単価、純資産、現金保有残高等。

施策。民間的経営手法の導入、事業規模や形態の見直し、費用の削減や抑制対策、収入増加や確保対策、
経営感覚に富む人材の登用、低い病床利用率への対応、他院と比較可能な形の財務情報の開示、
施設、設備整備の費用抑制など。

病院や診療所の経営統合、医師派遣等に関わる拠点化、機能における重複競合を避けること、
連携を取ること。

—–

指標例や取り組み事例は、参考になりますね。
自院の置かれている状況によって、自院が注目すべき指標は変わりますが、
基本的な指標の変動をモニタリングすることは必須です。

基本は、経常損益ですね。黒字か赤字か、分かりやすい指標です。
これが赤字なら、真っ先に手を加えなければいけません。

そして、その状況が生み出しているものは何か。

人件費はどうか。材料費はどうか。
病床の利用率はどうか。単価はどうか。
それらを改善するために必要な経営手法の学びと実践、
トータルで取り組んでいく必要がありますね。

【公的病院の経営形態の見直しの4つの選択肢】

・地方公営企業法の一部適用。
病院のトップである病院長に、人、物、金に関する権限がほとんどない。

・地方公営企業法の全部適用。
人事、予算、契約の締結等に係る権限が付与され、より自律的な形が可能となることが期待される。
ただし、条例の変更や予算の承認など、議会の議決を要する点においては一部適用と変わらない点もある。

・地方独立行政法人。
地方自治体とは別の法人格を有し、理事長を経営責任者とする行政法人。
法人の一切の権限は、理事長に付与されるため、権限と責任の明確化が図られる。
職員の採用は、公務員定員から外れるので、柔軟で迅速な対応が可能となる。
契約については、複数年契約も可能となる。
デメリットは、人事給与制度を病院単独で運用するため、管理部門の拡充が必要、
それに伴う経費や雇用保険料、役員報酬等経常的な費用が発生する、など。

・指定管理者制度。
法人その他の団体であって地方公共団体が指定するものに、公の施設の管理を行わせる制度。
民間の医療法人などを指定管理者として指定することで、民間的な経営手法の導入が期待される。
民間の経営手法が発揮され、効率化が期待されるが、
指定管理者の場合は監査が法定化されていないため、経営の透明性が低くなる。

今後、社会医療法人と公的医療機関の両者が効率的な形を行いながら、
競争あるいは協力しあい、患者本位の経営を目指していくことが重要である。

民間非営利組織のガバナンスを確保する社会医療法人には、
地域と一体となり得る透明性の確保が想定され、自治体病院再編の切り札となることが期待されている。
ただし、条件が厳しいため、認定を受けている病院は少ない。

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自由度を増せば増すほどに、管理コストも増える。
透明度や規律性を高めれば高めるほど、自由が奪われる。

痛し痒し、ですね。

とはいえ、民間の経営手法の導入は方策としては有効でしょう。
公的病院だからこそ、経営に厳しく、そして柔軟に向き合う姿勢や
民間病院との連携も深めていきたいですね。

ただ、お互いに連携したい、情報を共有して、無駄を削減したい、
という思いはあると思いますが、そうならないのはなぜでしょうか。

リーダーシップをとれる人、または機関がいるかどうか、でしょうね。
それが、市町村なのか、病院なのか・・・。
地域の中で異なりますが、問題意識を持った人達が少数でも集まり、
拡げていく活動が必要でしょう。

【民間譲渡】

使命である政策医療や地域医療を担う医療機能や人材や経営マインドがなく、
経営健全化の見込みがない場合、及び市町村合併による統廃合で廃止になる場合には、
最終的な手段として民間に全てを移譲することが考えられる。

・経営形態の比較

一部適用病院と全部適用病院の経営状況に大きな差異はない。
事業管理者の経営手腕や行政側のバックアップ、地域のポジショニングなどに影響を受けることが大きい。

・PFI

民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に基づいて、
公共施設などの建設、維持管理、運営などを民間の資金、経営能力及び技術的能力を
活用して行う事業手法である。

民間事業者が複数企業で、特定目的会社を結成する。
ペーパーカンパニーであり、企業等が所有している資産を担保に債券を発行して
資金調達する場合などに利用される。建設機関や維持管理、運営期間にわたって
生じる資金を長期分割して支払うことが可能な方法である。

PFIの大きな目的は、従来の公共事業より効率的で、質の高い公共サービスを安価で提供すること、
すなわちVFMを達成することにある。

委託契約となるので、固定費用に分類される。
SPCへの委託は、親会社、子会社等への中間マージンの発生など、
一社の直接委託にかかる費用と比較しただけでも、委託費用が割高となりやすい。

【医療法人の選択肢】

新医療法人制度によって、既存の持ち分のある社団医療法人は、
経過先として存続可能であるが、新規で一部の定めがある医療法人にはなれない。
社団医療法人で持ち分の定めのない医療法人のみである。

医療というのは公共性の高い業務であり、社会的に保護されるべきものでもある。

医療法人の非営利性。
病院または一定規模以上の診療所の形をするものであり、利益の配当を行わない、という基本がある。

ただし、様々な手段を通じて事実上の配当を行っているのではないか、という疑問もある。
例えば、内部留保を通じて個人財産を蓄積、社員の退社時に剰余金を払い戻すことは事実上の配当になるか。
メディカルサービス法人などの営利法人に入れることはどうか、など。

利益の配当を認めた場合、その配当を還元するために、利益が最優先され、
過剰診療、不採算部門の切り捨て、質の低下を引き起こしかねない。
医療は、平等に医療を受ける機会を与え、保護される必要がある。

利益の上がるビジネスチャンスとして捉えるような考え方がまん延すると、
医療のありかたを大きく誤らせるのではないか、と医師会は考えている。

逆に、株式会社が病院を経営しない弊害として、
他の先進国に比べて最先端の施設、設備、医療サービスを受ける機会が奪われているとも言える。
また、資金元を見つけることが難しいという現状もある。銀行等の貸付金がメインとなっている。
株式会社参入を認めた場合、資金調達の可能性は広がる。

今後の課題。

医療法人制度改革や公益法人制度改革が行われた背景には、
政府部門や民間営利部門だけでは、様々な社会のニーズへの対応が
困難になりつつある状況が生じているという問題意識がある。

今後ますます、民間の非営利部門による公益的活動の健全な発展を促進し、
いっそう活力ある社会の実現を図ることが重要な課題である。

—–

私は、医療法人勤めなので、特に興味深く読みました。

利益が無ければ潰れる。
医療の公共性に訴求する前にまずは継続できる経営体制を構築しなければ
話になりません。
とはいえ、利益ばかり追いかけてはなりません。
そもそも、病院に限らず、利益のみに走っている企業は長持ちしないでしょう。

利益は、顧客に提供する価値の対価として頂くもの。
相応の価値を提供するからこそ、顧客から選ばれ、利益となります。

何を出発点とするか、ここを誤ってはいけませんよね。

とはいえ、無尽蔵に資源がある訳ではないので、
地域から必要とされる最大ニーズを見極め、自法人の資源を投入する
鳥の目、魚の目、虫の目と行動力を持って、取り組んでいきたいですね。

では、また明日(^_^)v

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