【理論と実践】医療経営士1級試験対策(医療における地域差に見る諸問題。病床過剰はなぜ悪いのか?)

2023年9月2日

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令和5年8月24日 病院経営の理論と実践 1929号

医療における地域差に見る諸問題。病床過剰はなぜ悪いのか?

中神勇輝(なかがみゆうき)
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おはようございます。中神です。

〜今日のテーマ〜

本日の内容は、

「医療における地域差に見る諸問題。病床過剰はなぜ悪いのか?」

について。

さて、試験まで、10日(今日を入れて)です。

知識等の最終確認・追い込みをかけていきたいと思います。

今回、「この国の医療のかたち 医療政策の動向と課題(尾形祐也先生 著)」より、学びをシェアします。

こちらの書籍は各項目ごとに問題提起が書かれています。
試験対策も踏まえ、所感を述べていきます。

【数字から見る日本の医療の地域差】

内容に入る前に、問われていることを紹介しましょう。

「我が県は病床数が多く、医療へのアクセスも良く、県民は大変満足している。
病床数が多いことが、しばしば悪いことであるかのように批判されるが、
一体どこが悪いのか、という議論に対してどのように答えるか?」

です。

さて、前提となる内容を確認していきましょう。

2025年ビジョン(病院経営の理論と実践 1928号参照)に書かれている全体像は、
日本全体のトータルのイメージです。
では、それが全ての地域に通じるかと言われるとそうではありません。

医療や介護の提供状況は、地域の実情を反映した一定の地域差が存在します。

都道府県別人口10万人対病床数で見てみましょう。

一般病床の場合、高知県が最大、埼玉県が最少で、その差は 2倍強になっています。
療養病床の場合、高知県が最大、神奈川県が最少で、その差は6.1倍です。
この要因は、高齢化の程度や寝たきりの人の数などを考慮する必要もありますが、
6.1倍という大きな差の説明になりません。

また、病床数の多いトップ5は、北海道を例外とすると、九州や四国、中国地方に集中しています。
病床数が少ないトップ5は、関東、東北地方に多いです。

西高東低傾向にあります。

【地域差を踏まえての課題】

こういった地域の差を踏まえてどう考えれば良いでしょうか。

地域医療構想は、それぞれの地域の実情を踏まえた地域医療モデルを構築していくことを目的としています。

全国一律の金太郎飴のような医療モデルの整備は、現実的ではありません。
行政のみならず、保健所や地域住民、医療提供者など地域のステークホルダーが協力しあって、
地域の実情に即したモデルを作ることが求められます。

2025年ビジョンという標準化と、地域差という多様性の両立を図るチャレンジングな課題が眼前に迫っています。

【病床過剰、という指摘をどう考えるか】

さて、お題に戻りましょう。3つの視点から述べます。

まず、医療従事者の視点です。

病床数が多ければ、その分、入院できる患者さんは多くなります。
しかし、その病床で働く医療従事者や投入できる医療資源が分散します。
広く薄く浅い体制になってしまいます。

その中、医療の質を担保する、ということは容易ではありません。
また、今後、少子高齢化の中で、生産年齢人口が減ります。
医療従事者が減る中で、同じような体制のままでは、人材の奪い合い・囲い込みが起きてしまいます。

それぞれの医療機関の部分最適でなく、地域によっての全体最適化を図る必要があります。
自院に手薄な診療科があれば、思い切って止めて、近隣の医療機関に集約することも考えられます。
地域連携推進法人という形は、その一つです。
生産性を向上するためのDX化も必須です。
地域にとっての必要性を訴え、行政と連携することや、補助金等の申請も有効です。

二つ目に、患者の視点です。

病床数が多く、不調があれば入院できる、という環境はある意味恵まれています。
ただ、それが当然という思考になると、自宅や施設等で過ごすという意識が薄くなります。
また、入院という普段と違う環境に置かれることで、せん妄になってしまう、そんなこともあります。

よって、医療が必要であっても、病院でなく、在宅や施設で生活できる体制が求められます。
医療機関の立場であれば、在宅診療をできる体制づくり、
介護サービスを利用できるように地域のケアマネジャーとの連携は必須です。
「家」の力を最大活用する必要があります。
佐賀県の織田病院の「在宅病床」という考え方は、素晴らしいです。

最後に、社会保障費の視点です。

入院医療はコストが高いです。
生産年齢人口が減る中で、税収は減ります。
支出が同じ、または増えるようでは、保険制度が成り立ちません。

在宅で過ごすこと、健康で暮らせること、食事や運動の勧めといった啓蒙、
地域のコミュニティーなど交流の場を作ることによって、入院医療に頼らない環境を構築していきます。

【終わりに】

医療機能の集約、在宅生活を支える場作り、地域住民の啓蒙などは一例です。
その他にも何ができるか、自院の経営資源を踏まえ、考え取り組んでいきたいですね。

以上です。では、また明日(^-^)v

(当該内容は、私の所属する組織とは一切関係はなく、全ての文責は私個人に属します。)

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この記事を書いたのは、こんな人。
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地方の中小病院に勤務する医事課畑出身の企画部門所属にする医療経営士2級。
名は、中神勇輝。2023年、医療経営士1級を受験予定。
(可能なら中小企業診断士も受験する予定。)
趣味は、ドラムと家庭菜園と筋トレ(HIIT最高!)と読書。